― 肉が語る「音」と「香り」を聴け ―
焼肉の主役は、実は“火”です。
火加減ひとつで、肉は香ばしくもなり、台無しにもなります。
三階松では、この“見えない火の演出”を「声なき料理人」と呼びます。
肉は言葉を持たない。けれど、音と香りで焼き加減を教えてくれるのです。
焼き台には火加減があります

🔹 強火=香ばしさを作る(タン、赤身系)
最初の一瞬で“香ばしさ”を生むのが強火の役割。
肉を網に乗せた瞬間に「ジューッ」という音が出る。
この“最初の30秒”で表面をカリッと焼き上げ、香ばしい香りを閉じ込めます。
タンのように脂の少ない部位は、
一気に高温で焼いて香りを立たせるのが正解。
強火は香りをデザインする火です。
まるで“火の香水”を肉にまとわせるような時間。
🔹 中火=肉汁を閉じ込める(上赤身系)
次に肉が「呼吸」するのが中火。
中火は、表面を焦がさず中までじっくり火を通す温度帯。
上赤身(しんしん、ランプ)は、脂と肉汁のバランスが命。
強すぎる火では脂が落ちすぎ、旨味が逃げてしまいます。
中火は、肉の中に旨味を残す火。
じゅわっと浮き出た肉汁が光る瞬間が、返す合図。
このタイミングを見極めるのが職人の“耳と鼻”です。
🔹 弱火=余熱で仕上げる(上カルビ等サシ多め系)
最後は“整える火”。
弱火は、サシの多い表面に直接火を当てずに熱で肉の脂を溶かす。
また厚切り肉の場合は表面に焼きのコーティングを入れ、
最後のひと息をこの弱火で包み込む。
余熱で旨味を落ち着かせる=香りを完成させる。
ここで焦って網から上げると、まだ旨味が落ち着かず、肉汁がこぼれる。
火加減の締めくくりは、音ではなく“静寂”。
焦げつく音が消えた瞬間こそ、肉が「もう大丈夫」と語りかける合図です。
🔹 厚切り肉ルール:「最初は強火、仕上げは弱火」
三階松では、このリズムがあります。
「強火で香りを作り」「中火で旨味を閉じ」「弱火で整える」。
この“火の三拍子”が、和牛の香りを最大限に引き出す鍵。
焼肉とは、ただ焼く料理ではなく、
火と肉の会話を楽しむ体験。
五感を研ぎ澄ませば、肉は必ず“合図”をくれます。
それを感じ取れたとき、あなたも立派な「焼き師」です。
🥩 店主より一言
強火=タン、赤身系
中火=上赤身 程よいサシ系
弱火=上カルビ等サシ多め系
火加減を制する者は焼肉を制す






