お客様が届けてくれた、
鹿児島の幻の一本
八幡ろかせず——信頼が運んだ芋焼酎の物語
あの日、カウンターに置かれた一本のことを話させてください。
先日、鹿児島県出身のお客様が三階松に来てくださったとき、一本の焼酎をそっと差し出してくれました。
「これ、持ってきました。オーナーさんならきっとわかると思って」
ラベルに大きく書かれた文字——「ろかせず」。
鹿児島・南九州市川辺町の小さな蔵元、高良酒造が年に一度だけ出荷する、幻の芋焼酎でした。
だから「ただ美味しい焼酎」ではなく、「こだわりとストーリーがある地元の焼酎」を厳選して持ってきてくれた。
これは単なるお土産ではありません。お客様から三階松への、信頼の証だと受け取りました。
高良酒造という、小さくて誇り高い蔵元。
高良酒造は、薩摩半島の南部、鹿児島県南九州市川辺町にある蔵元です。明治40年創業、ルーツは神主の家系という、家族だけで焼酎を造り続けてきた場所です。
規模は小さい。でもその名は今や全国、いや世界の焼酎ファンに知られています。
理由はシンプルです。妥協しないからです。
敷地内から湧き出る新鮮な湧き水。
一次も二次もすべて甕による仕込み。
すべてを手間ひまかけて、生真面目に造る。
それが高良酒造の流儀です。
その代表銘柄「八幡」のろ過工程をあえて省いたのが、この「八幡ろかせず」。名前がそのまま哲学になっている焼酎です。
| 蔵元 | 高良酒造有限会社 |
|---|---|
| 所在地 | 鹿児島県南九州市川辺町 |
| 創業 | 明治40年(1907年) |
| 原材料 | さつまいも(黄金千貫)・米麹 |
| 麹 | 白麹 |
| 仕込み | 甕仕込み(一次・二次ともに) |
| 蒸留 | 常圧蒸留 |
| アルコール | 35度(無濾過) |
| 出荷 | 年に一回・3月下旬限定 |
「ろかせず」——その言葉に込められた意味。
焼酎というのは一般的に、蒸留した後にろ過を行います。ろ過することで雑味や不純物が取り除かれ、見た目も澄んで、飲みやすい焼酎に仕上がる。
ただ、ろ過をすればするほど、芋本来の香りや旨みも一緒に失われていきます。
高良酒造はその「失われるもの」を惜しんだ。
蜜のような甘み、骨太なコク、芳醇な香り——
すべてをそのままグラスに届けるための、蔵元の覚悟です。
ただし、無濾過だからといって荒削りなわけではありません。仕込み・蒸留・熟成の各段階でキメ細やかな手間をかけることで、無濾過でも驚くほど滑らかな口当たりに仕上がっています。これはひとえに、蔵元の技と感覚によるものです。
封を切ると、芋の芳醇な香りがふわっと立ち上る。口に含むと、蜜のような甘みと重厚なコクが広がり、喉越しの余韻まで存在感が続く。それが八幡ろかせずです。
なぜこの焼酎が「幻」と呼ばれるのか。
八幡ろかせずは、年に一度・3月下旬だけの限定出荷です。小さな蔵元が手間をかけて造るため、生産量はごく限られています。
鹿児島の地元酒店でさえ、購入制限があり、発売と同時に売り切れることが珍しくない。それをわざわざ地元で確保して、蒲郡まで持ってきてくれた。
あのお客様の気持ちを思うと、今でも胸が熱くなります。
黒毛和牛と、ろかせず。この組み合わせを試してほしい。
35度という度数は確かに高めです。でも、この焼酎はどんな飲み方でも美味しい、懐の深い一本です。
重厚な味わいをじっくり楽しむなら。氷が溶けるにつれ表情が変わる。
芋の甘い香りが一気に花開く。寒い夜に特におすすめ。
薄めても味が負けない。食中に合わせやすい飲み方。
そして、三階松の黒毛和牛との相性がまた格別です。
濃厚な芋の甘みは、和牛の脂の旨みと不思議なほどよく合います。タレではなく「塩」で味わう三階松のスタイルと、無濾過のまっすぐな焼酎の個性が、お互いを引き立てあう。
ろかせずをひと口。
その繰り返しの中に、鹿児島の大地と、川辺町の小さな蔵の誇りが感じられる気がします。
あのお客様が届けてくれた想いを、今度は私がグラスに込めてお客様にお渡しする。それが三階松の在り方だと思っています。
そしてすぐに、鹿児島でいつもお世話になっている酒屋さんへ即注文。
入荷次第、三階松でご提供できるよう準備を進めています。
今しばらく、お待ちください。



